第2章教える立場の喜び【導き】
#5 やり甲斐:過去の思い出から
ここでは私が実際に経験した心に残るエピソードを紹介させて頂きます。
自分の失敗を素直に認めることが出来て前に進めたこと、最後まで部下と向かい合うことが出来て味わった喜びと悲しみ、お客様の立場を感じることが出来た喜び、そして強く思う気持ちは必ず伝わる。
こんな内容になりますが読んで頂ければ幸いです。
宜しくお願いします!
目次
〔相手を思いやる大切さ〕
当初店を始めた頃、毎日が必死でした。
お客様に喜んで頂きたい。
スタッフの教育をしっかりしなければいけない。
いま思えば少しの余裕も持てずに走り回っていたと思います。
ある時の出来事です。
一人のスタッフが商品整理を行っていました。
棚の乱れた商品のたたみを行っていました。
私は商品の陳列の仕方に違和感を持ちました。
「なぜこの順番で商品をたたんでいるの?これってお客様からすると見づらくない?前に教えた遣り方かな?」
私は以前、棚に商品を陳列する際の陳列方法を教えていました。
もちろんなぜそうする必要があるのか?
お客様にとって見やすい買いやすい為の根拠も教えていました。
すると返ってきた言葉は予想外のものでした。
「オーナーさんの言うことが全てですよね。」
泣きながらの言葉でした。
私にとっては衝撃的な出来事でした。
彼女は伝えた内容を理解していたと思います。
只、オーナーである私の言うことには素直になれなかったと思いました。
私の持論になりますが、サービスはマニュアルでありマニュアルは働く全ての従業員を一つの型にはめるものと思っています。
サービス=奴隷の意味です。
教えたことを100%行っていく。
そこには余計な感情は要らない。
それ以上でもなければ、それ以下でもない。
このように思います。
スタッフ皆でお客様に小さな感動を届ける。
私が求めているのは、そんな思いやりでした。
思いやり=おもてなしを目指していました。
いま振り返れば、あの時の私は自分自身に相手を思いやる少しの余裕がなかったと反省しています。
相手に対して強要していたのかもしれません。
相手に対する思いやりのないコミュニケーションをとっていた為に起った出来事と思います。
事業主と使用者の間には、どうしても解決出来ない温度差があると自覚しました。
それは、おもてなしを追求していく上で大きな弊害になると思いました。
その後、言うまでも無く売場の舵取りを行う売場責任者を設けることにしました。
もちろん使用者の中から抜擢しました。
使用者が店長で部下も使用者。
この関係の方がお互い少しの余裕を持って業務が出来ると確信しました。
〔本気で向かい合う〕
あるスタッフが入社して1年たったころのある日の出来事です。
その店舗のリーダー(1年目の店長)に、「○○は、まだアプローチ(接客の入り込み)が弱くないか? フォローしているか?」とそのスタッフのことを尋ねました。
するとリーダーの返事は、「○○さんの事まで面倒見切れませんよ!」の一言でした。
しかも他のスタッフがいる中での発言でした。
これはまずいと思いました。
リーダーが他のスタッフの前で別のスタッフを打ち消すような発言をしたからです。
これは平等性に欠ける発言と思いました。
舵取りとなるリーダーは、決して部下に対して個人的感情での好き嫌いを持ってはいけない。
なぜなら売場メンバーの統率が出来なくなるからです。
閉店後、その日のメンバーを食事に誘いました。
食事も終わり今日の出来事の本題に入りました。
「○○の事だけど、何で面倒見切れないって思った?」
彼女は沈黙のままでした。
そして次の瞬間、「この状態でここにいることは出来ないので帰らせて頂きます。」と言い残し帰っていきました。
その日の晩にマネジャーを通して彼女からメールが届きました。
退職願いの内容が記載されたメールです。
正直、予想外の出来事でした。
なぜなら彼女は若いなりにも自発性があり自分から仕事をつくり、それをこなしていく。
また人を引っ張っていく統率力も兼ね備えていました。
私なりに信頼も厚かったスタッフでした。
翌日から3日間彼女と仕事の後に食事に行きました。
3日間を通して私が彼女に伝えたことは以下の内容です。
「お前は本当に暴れ馬だな。どこに向かって走り出すか理解不能だよ。なぜこんなことで辞める。お前の頑張りは本当に認めている。若いのに野心を持って執着心を持って仕事に打ち込む姿勢は立派だよ。只、お前の部下のいる前で他の部下の誹謗中傷は絶対に言ったら駄目。
なぜなら平等性に欠けるし、リーダーとしてのお前の価値が下がってします。
最終的にはお前が損をする。
あと辞めてどうする?お前の努力で他人に認められた頑張りを無駄にするのか?また一から積み重ねていくのか?
俺はお前を信頼しているし、何より築き上げた実績を無駄にしてもらいたくない。自分にとって損はしてもらいたくない。」
しばらく考えさせてほしいとのことでした。
もともと今回の原因になったスタッフの話をしますと、
遅刻をしない、他のスタッフに何かあり出勤出来ないときに気持ちよく代わりに出勤してくれる、何度となく同じことを言われても嫌な顔をせずに受け入れる。
基本的には真面目なスタッフです。
欲を言うなら、自発性がなく同じ事を何度となく導いても自分のものに出来ないとこがあります。
きっと彼女も成長出来ない相手に頭を悩ませていたのでしょう。
私は以前から売場の舵取りを担うリーダー職以上のメンバーに伝えていることがあります。
いろんな性格の部下がいる。
元々販売職としての資質を兼ね備えている部下、こんなスタッフは方向性を示してあげれば勝手に自分で学習してスキルを身につけていく。
売場の舵取りとしての資質を問われるのは、販売職としての資質は兼ね備えていないけど、一生懸命に頑張ろうと思うスタッフに対して導いてあげられるか。
どこに導くのか?
お客様に対して思いやりを持って接していく。
それに気がつけば販売職としてのやり甲斐、達成感、喜びを渡すことが出来る。
その為に売場での立ち振る舞い方、心構えを教えていき導いてあげる。
私はそのように思います。
正直、各スタッフの力量の差は必ず出来ます。
大切なことは、そのスタッフの力量にあった位置でオペレーションをしてあげることです。
リーダーも今回の自分の発言は駄目と十分解っていたと思います。
きっと焦りがあり、葛藤があり、そんな中での指摘だったので心が一杯になってしまったと思います。
一週間後に彼女から、「もう一度、頑張っていきます。」と言葉を頂きました。
私も思わず握手をして安堵の気持ちになれました。
〔裏切るなら、裏切られたほうが後悔はしない〕
ある店舗でこのような出来事がありました。
ひとりの18才のスタッフが店内の商品を盗んでしまいました。
それを私が知ったのは内部通報があったからです。
そのスタッフは、あろう事かその商品を売場に着て勤務していました。
まずはエリア責任者に「棚卸しが合わない。残念ながらお客様を含めて誰かが盗んでしまった疑いがある。今後は店内でのスタッフの立ち位置、店内でスタッフが一名になった時は特にお客様の動きに注意してほしい。」と伝えるように指示しました。
その後、そのスタッフからエリア責任者に「盗まれた服が私の着ている服と同じなので皆から疑われていますかね?」と相談がありました。
いろいろ話合った結果、「私が盗みました。」とエリア責任者に告白しました。
その報告を受けてエリア責任者に話したのは、「誰でも失敗はある。一番大切なことは、失敗を認め反省して他の迷惑かけたスタッフに対して謙虚に謝罪をすること。そして他のスタッフが受け入れてくれるならチャンスをあげて欲しい。」と伝えました。
もちろん最終責任者の自分の耳には届いていないことが前提でした。
自分の非を認め、謙虚に相手に謝罪出来る。
これほど立派なことはないと自負しています。
そして人の痛みが解る人間に成長してもらえると思っています。
結果、彼女は他のスタッフ全員に非を認め謝罪しました。
ここで終わってスタッフが更に強い絆で一つなれたら最高でした。
しかしながら事はそんなにうまくいきませんでした。
また商品を盗んでしまいました。
今度は商品だけでなく、金庫にある小口現金も盗んでしまいました。
2度目の出来事でした。
社会人として仕事人として謝罪して済む問題ではありません。
彼女を採用したのは自分です。
その責任のもと彼女に出来ることは、自分自身で落とし前をつけさせてあげることです。
自分の不祥事の後始末は責任を持って自分で解決することです。
身元保証人のお母さんに足を運んでもらいました。
その日はお父さんと彼女の弟も一緒に来られました。
彼女の弟はまだ幼稚園生の幼い子で、当日は熱があり冷えピタを貼っていました。
当初、彼女は商品を盗んだことは認めましたが、現金を盗んだことは認めようとしませんでした。
今日用意してきた書類は、懲戒解雇の通知書と刑事告訴の通知書でした。
初めから刑事告訴の通知書は出すつもりはありませんでした。
只、両親の考えは二つに割れていました。
お母さんは、この子の為に刑事告訴して下さいでした。
お父さんは、この子の将来の為にも刑事告訴は控えてもらいたいでした。
なかなか現金を盗んだことを認めない彼女に言った言葉は、「今日、お前の為に時間をさいてお母さんとお父さん、そして熱のある弟が来てくれている。本来、今日一番先にしなければいけないことは病院に行くことだろ。それをお前の為に病院に行くことを後回しにしてここにいる。弟は自分を犠牲にしてお前と向かい合っている。人の痛みが解る人間にならなければいけない。自分の巻いた種は自分で拾うことが社会人として大切なことだよ。」と彼女に投げ掛けました。
そして彼女の口から「盗みました。」と言葉を聞くことが出来ました。
盗んだ現金と商品代金は彼女の給与から返却させて頂きました。
もちろん刑事告訴は取り下げました。
最後に懲戒解雇の通知書を読み上げて退職をしてもらいました。
本当に涙がでるほど辛い時間でした。
別れ間際に彼女に伝えた言葉があります。
「失敗は誰にでもある。大切なことは失敗を謙虚に認め、迷惑を掛けた両親と弟に謙虚に謝罪しなよ。そしてこれからは絶対に自分が損をすることをしちゃ駄目だよ。もっと得をする人生を歩んでくれな。」
それが彼女にかけて最後の言葉でした。
そして自分が彼女に出来る最後の責任でした。
〔責任の重さを感じるなら上を使え〕
お給与はお客様から頂きます。
お客様がレジで商品代金を決済する一部がお給与です。
スタッフはその為にお客様に恩返しをしていきます。
その意味での責任はスタッフ全員が持っています。
オペレーションに沿ってお客様の為に働くスタッフの責任。
現場スタッフを取りまとめて舵取りをするリーダー(店長)の責任。
もちろん責任の重さはリーダーの方が重いです。
お客様に対して、スタッフに対して、商品に売場に対して目配り気配りが求められます。
ある日の晩にある店舗で気になったことがあり、業務の進行状況を確認しようと売場責任者に連絡をしました。
何度か連絡しましたが電話は繋がりませんでした。
私からすると早々に進ませて行かなければいけない案件でした。
メールで、「もう俺の方でするから○○はしないでもいい。」と伝えました。
正直、私自身イライラしていたと思います。
しばらくしてから彼女から連絡が入りました。
「しなければいけない事は解っています。今もしています。子供が熱を出しているのです。子供に冷えピタを張ってあげたいのに貼る余裕もないのです。」
涙ながらの訴えでした。
私はその光景を思い浮かべると恐ろしいほど気が遠くなる思いでした。
そして彼女に対して気遣い出来なかったことを反省しました。
「ごめん!そんな事と知らずに。」と返しました。
一息おいて、「何で俺に子供が熱を出して仕事の処理が出来ないって言ってくれないの。そんな時だからこそ上を使わなければいけないじゃないか。只でさえ仕事が多いのだから上手に上を使わないと駄目だろ。」と伝えました。
彼女の返答は、「そんな考え方、私の中にはありません。」
彼女が少しの余裕も持てない中、仕事と向かい合っていることに対して申し訳ないと感じました。
しかも子供を犠牲にさせて仕事をさせている自分がいました。
「本当に申し訳ないと思っている。早く子供に冷えピタを貼ってあげろよ。
これからは上を上手に使う。この事を学んで欲しい。」
そう言って電話を切りました。
本来、上司に使われるのでなく上司は使うものだと思っています。
自分が業務を円滑に進ませていく上で、上司を使った方が迅速に先に進める。
そう思うなら使うべきです。
上司からしてもその方が助かります。
なぜなら部下が先を考えて業務を進めてくれているからです。
上司が部下の手のひらで使われる。
こんなにありがたいことはありません。
〔相手の痛みが解る幸せ〕
またある店舗にお客様を接客することが大好きなスタッフが入ってきました。
接客が大好きとあって向上心があり積極的に仕事を習得していきました。
会社では等級査定というものがあります。
これは従業員を平等に評価してあげて時給単価の見直し、社員登用をしていくシステムです。
彼女も1年ほどで社員登用できるとこまでスキルが上がりました。
そして社員への転換をこちらから要望した時です。
彼女が切り出した言葉は、「採用して頂いた時は黙っていたのですが、私には持病があります。パニック症候群を持っています。」でした。
ビックリはしましたが彼女に返した言葉は、「病気が有ろうと無かろうと、立派にお客様の為に頑張ってきたじゃないか。心配しないで今までと変わらずに頑張りなさい。」と伝えてあげました。
もちろんその後、ネット等でパニック症候群の病気の症状や対応について学びました。
そして一つの結論を出しました。
それは他のメンバーに告知することでした。
彼女が仕事の中で病気を発病しない時、また発病しても居場所を失わない為でした。
他のメンバーも必ずそれを受け入れて向かい合ってくれると信じていました。
なぜなら他のメンバーも彼女の頑張りを認めていたし、何より皆が他人に対しての思いやりを持っていたからです。
決断した翌日にメンバーに対して、「○○はパニック症候群の病気を持っている。
発作が起こると呼吸が乱れてしまう。その時はビニール等を使って口をふさいであげてほしい・・・。」
他のメンバーにこの話をする了解は彼女からもらっていました。
ある時、恐れていた病気が再発しました。
思った以上に手強い病気でした。
あんなに接客が大好きだったのに人前に出られない。
ストックルームでうずくまり泣きじゃくり呼吸が乱れる。
ご両親とも話合い出勤日数の調整をしたり、出勤中に体調が崩れた時には
ストックルームで横になってもらったりしてしのぎました。
ある時、本人から会社を辞めたいと申し出がありました。
辞めたい理由は、メンバー皆に自分のことで迷惑をかける。
またお医者さんから今の環境を一度フラットにした自宅静養したほうが良いと言われたことでした。
あんなに接客が大好きなスタッフがここまでネガティブになってしまうことに驚きました。
確かに自分で判断する思考能力が完全に落ちていました。
退職を受理すべきか迷いました。
考えたすえに出した結論は退職を回避することでした。
主治医の先生からは3年ほど治療を受けていた事、この病気は完治する事、
彼女は完璧主義者だった事を踏まえた上での判断でした。
以下の内容を彼女に伝えました。
「お前は内に入ってから一度も欠勤がないよな。パニック症候群の持病を持っているのに立派に頑張っているよ。先生が言う通り会社を辞めて自宅静養することも一つの選択肢だと思う。只、俺は今まで頑張ってここまで前に進んできたものを全て捨ててしまうことがもったいないと思う。お前が築き上げてきた道のりなのに。お前は完璧主義者で非常に頑固な性格だと思う。俺はその性格が病気と向き合う上で邪魔していると感じている。まずは自分自身がパニック症候群を認めるべきだと思う。自分の体の中にはパニックくんと同居していることを認めるべきだと思う。今のお前は他人に助けてもらえなければ生きていけないことを認めるべきだと思う。自宅では両親、仕事場では他のメンバーだよ。
いま大切なことはパニックくんが表に出てこないように自分自身でコントロール出来るようになることが重要だと思う。必ずその入り口があるはず。その入り口を自分で見つけることが大切。後は頑張る必要はもうないよ。もう十分に仕事頑張っているのだから、これからは素直に他人に甘えなさい。今日から店がお前のリハビリーセンターだからな。」
その後も体調の浮き沈みはありましたが、「365日の紙飛行機」などの歌を送ったりして励ましてきました。
ある時、「何かパニックになる入り口が解ったような気がします。」と彼女から言われました。
これで一歩先に前進です。
今は体調も安定していて元気に大好きな接客をしています。
パニック症候群は完治する病気!
それを信じて向かい合っていこうと思います。
あと彼女を励ましフォローをしてくれているメンバーには心より感謝です。
ありがとう!
〔自分の失敗を気持ちよく認められた幸せ〕
ある日の週末でした。
その日は集客も少なく売上が非常に厳しい日でした。
経営者として心配する事は、従業員の給与の支払は大丈夫か?
当時は毎月、従業員の給与の支払額まで売上が到達するまで気が気じゃありませんでした。
その日は私も店頭に立って、お客様への店内案内・ブランド紹介・本日のお買い得情報等のアテンションをしていました。
只、笑顔がなく、厳しい目をしていました。
更に従業員に対しての口調も厳しかったと思います。
「売上が厳しい、どんどん接客に入ってくれ。」
「もっとお客様を盛り上げる為に声を出してくれないか。」
しかもお客様のいる前での話です。
焦っていた自分がいました。
その日の売上は予想通り予算を割りました。
自宅に帰ってから一本のメールがきました。
その店舗の従業員からです。
「私達は精一杯に売場で頑張っています。これ以上、どう頑張るのですか。
これ以上頑張れません。これは皆の意見でもあります。」
読んだ瞬間、頭が真っ白になりました。
15秒ほど過ぎた時に頭をよぎったことは、
「何で?俺は皆に給与を渡すことを心配していたのに。」
こんな事を思っていました。
只、数分過ぎたとき我に戻りました。
「給与を心配することは俺の都合。あの子達は今日も売場でお客様に対して笑顔で接してくれていた。目先の売上に振り回されて大事なことを忘れていた。
皆だって売上が伸びないことに焦っていたと思う。本来であれば俺がそんな気持ちになっている従業員を盛り上げていかないといけなかったのに。」
本当に反省と後悔でした。
時間は戻ってはくれません。
まず今出来ることをする。
メールをくれた彼女に連絡をしました。
「本当にごめんなさい。俺がイライラしている中でも皆はお客様に笑顔で接してくれていた。お前がメールくれなかったら俺は自分の間違った行為に気がつかなかったと思う。今出来ることは謝ることだけど、謝って終わりとは思ってなんかいない。今後の俺を見て判断して欲しい。本当にごめん!」
翌日俺が問題を起こした日に出勤していたメンバーに連絡をしたり、仕事場で会って謝罪をした。
幸いだったのは、こんな出来の悪い自分を皆が受け入れてくれたことだった。
それから今日に至るまで、あの日のことは私の教訓になっています。
「今日が駄目なら明日があるさ!また仕切り直し!そして笑顔!」
〔一期一会の気持ち〕
やっぱり現場でのお客様と絡みは楽しい。
日々、一期一会の気持ちでお客様と向かい合っていると素晴らしい感動を頂くことが出来る。
小学校高学年の娘を連れてきたお母さんがいました。
洋服を選びフィッティングルームへ、次の瞬間カーテンを開けて「お母さん、これも着るの?」
その姿は上半身裸。
私のようなおじさんの前で、無邪気に裸で現れる・・・
まるで宮崎駿の映画の一幕に出てくる主人公の女の子のようでした。
「この子は男の子のような性格で、男の子のような格好しかしなくて・・・」と
お母さんは話してくれました。
確かに髪型はショートカットで普通のTシャツにロンパン、でもとっても可愛い顔立ちの娘さんでした。
お買上げの後、「お母さん、何とか女の子らしいお洋服を着てもらえるように頑張りましょう。また来て下さい。」とお伝えしまいた。
その後、何度かご来店になり積極的に可愛い洋服を進めていき、購入するか関係なくフィッティングルームで着てもらいました。
ある日、彼女にとっても似合いそうなパンツが入荷されました。
むら染めのしかもピンク色のむら染めパンツです。
ラインも細めで格好いいパンツでした。
再びご来店になられた際に、そのパンツをはいてもらいました。
嬉しいことに気にいてもらいました。
他の商品のご購入もありレジでお会計の際、自分が勝手に取り置きしていた
パンツは、おじさんからのプレゼントと言いお会計から除外させて頂きました。
自分がその子のことを思い選んでいたパンツ、そして笑顔で気にいって頂いただけでたくさんの幸せをもらいました。
私からしたら、その幸せが代金分でした。
その後、彼女がディズニーランドに行ってきたとミッキーのタオルをお土産に頂きました。
また家族と北海道旅行に行ったと熊と北海道の地図を型取ったキーホルダーを頂きました。
それから中学生となり、いつの日からかご来店がなくなった。
子供服からの卒業であり、この店からの卒業でした。
寂しい気持ちもあったが、本当にたくさんの幸せを頂いたことに心から感謝しました。
今でも大切にミッキーのタオルとキーホルダーは部屋に飾っています。
〔1,000円の感謝〕
その日の予算は15万、閉店1時間前の出来事でした。
私が遅番を一人で店にいた時です。
累計売上は5万程と記憶しています。
言うまでも無く心は沈んでいました。
そんな時に一名の女性のお客様がご来店されました。
その方は3足1,000円のソックスをご覧になっていました。
そこで私の脳裏を横切ったのは、「3Pかぁ~!」でした。
10分程たったでしょうか、お客様がレジに3足ソックスを持ってこられました。
カウンターに置かれた3足のソックスは色とりどり柄も別々の13㎝~15㎝のソックスでした。
私はそのソックスを見た瞬間、この方のお子さんの年齢は2才前後の男の子と思いました。
普段はそんなこと思うことはありません。
たぶん自分の中で今日の売上が悪く、そんな中の3足1,000円のソックスを求めて来られたお客様に対して気まずさを感じていたと思います。
袋にソックスを入れる時に、「2才の子供に対して、お母さんが一生懸命に選んだソックス、きっと何度も洗濯をしてはかれるのだろう。」
そんなことを思っていました。
そのうち気分も穏やかになれて、精一杯の笑顔でお客様に商品を渡せました。
この出来事があって以来、袋詰めをする際には、「お子さんの為にお客様が選ばれた商品、きっと喜んでたくさん着てくれるのだろうな。」そんなこと思いながらの袋詰めになりました。
自分まで幸せな気持ちになり笑顔になれました。
本当に感謝しかありません
ソックス3足の代金は1,000円(税抜き)です。
1,000円がなければ1万にもならないし10万にもなりません。
そしてこの1,000円で140円のお給与を頂くことが出来ます。
心より感謝です。
〔お客様の気持ちに寄り添う〕
ある年のクリスマス前の寒い晩に、80才前後の老夫婦が店を訪れました。
「孫が11名いるので、1名3,000円程の予算で洋服を見繕ってほしい。」と申し出がありました。
性別と年齢を聞いて一生懸命に選ばせて頂きました。
もちろんお客様にはこの商品で大丈夫か、この組み合わせで大丈夫かの確認をとりながらでした。
するとお祖父ちゃんが、「俺達に聞いても何が何だかわからないよ。あんたに任せるよ。」と言われました。
初めてご来店になられたと思いますが、初めての私を信用して洋服選びを任せて頂ける。
こんな寒い中、孫の喜ぶ姿を思い浮かべクリスマス・プレゼントを買いに着たと思うと、一生懸命にならずにはいられませんでした。
選んだ後は11セットをラッピングが待っていました。
不思議なことに大変と思う気持ちは一切ありませんでした。
この老夫婦の孫へのクリスマス・プレゼントを渡す過程に参加させて頂いたことに幸せを感じました。
出来上がった二つの大きい袋をお祖父ちゃんが抱えてお帰りになりました。
〔地上にいる神様(息子に対する思いで)〕
余談ですが、私は自宅から単身で別の地域で仕事をしています。
彼が小学校に入学した8年前の4月に単身を始めました。
その前まで勤めていた会社を辞めて、事業を始める前に家族旅行を思いつきました。
単身で地方に行かなければいけないこと、もしかしたら旅行など行けないほど苦労させるかもしれないと思ったからです。
4泊5日のグアム旅行でした。
透き通った南国の青空、青い海、海に沈む夕日、風に踊るヤシの木、
私は決めました!
息子が小学校を卒業するまでの6年間、このグアム旅行を毎年1回続けていくことを励みに頑張ろうと。
彼が小学校3年生の時、3回目のグアム旅行を間近に控えた1週間前の晩に家内から連絡がきました。
「明希(息子)のパスポートの有効期限が過ぎていた。もう旅行にはいけないかもしれない。」
涙ながらに話す家内がいました。
さすがに動揺しました。
落ち着け!落ち着け!と自分に言い聞かせました。
ネットで有効期限が切れたパスポート、1週間後の海外旅行に向けて再発行できるか調べました。
そんな経験をされた方の声は、いくら頼んでも絶対に無理とのコメントが並んでいました。
確かにパスポートの緊急発行特例措置では、親族が海外で病気・事故・天災等による死亡・危篤・入院の場合のみでした。
100%無理だと確信しました。
だけど息子の悲しむ姿、1年間この日の為に頑張ってきたと思うと諦めきれませんでした。
そして次の日一番で発券場所の交通会館、無理だったら外務省の担当部署に精一杯お願いすることを決めました。
正直、その日の晩はまともに寝られませんでした。
当日の朝、店に出勤して早々に交通会館に連絡をしました。
心臓がバクバクして動揺しながら連絡をしました。
電話口に女性の方の声がしました。
私は勇気をだして事情の説明を始めました。
「実は来週に家族旅行でグアムに行く者です。昨日息子のパスポートが切れていると家内から連絡がありました。私は単身赴任で別々に住んでいるのですが・・・」
もうそれ以上のまともな会話は出来ませんでした。
単身で息子に寂しい思いをさせていること、息子の喜ぶ姿が見られないこと、1年間この日の為にコツコツとお金を貯めてきたこと・・・
尋常でないとさとったのか、「少々お待ち下さい。」と言い電話口を離れました。
次に電話に出た方は聞くからに年配の男性の方でした。
一度吹き出した感情は既にコントロール不能になっていました。
自分でもあの時に何を話していたのかあまり記憶にありません。
ただひたすら涙をこらえて、その男の方に自分の息子に対する気持ちをぶつけていたような気がします。
次の瞬間、男の方が発する言葉が冷静に聞こえてきました。
「ではこうしましょう。お父さんとお母さんは急遽海外に仕事で出掛けなければいけなくなりました。息子さんはまだ小学生です。こちらで息子さんをみてくれる保護者の方がいません。したがって息子さんも一緒に連れて行かなければいけなくなりました。」
これで大丈夫ですかと問われました。
私はただただ「ありがとうございます。」と感謝の言葉を続けていたと思います。
3日後に交通会館のその方のもとへ家族でいきました。
ただ無理だと思いました。
その方にお会いしたら、また我を失って取り乱す自分がいると思いました。
しばらくすると二人の前に白髪の年配の男性の方が現れました。
電話口で対応してくれた方と思うと、私には神様に見えました。
心の中で感謝をさせて頂きました。
無事パスポートの申請手続きが終わったようで、家内が手紙を渡そうとしていました。
その男性の方は両手を前に出して、何かを家内に告げていました。
結局、手紙は受け取って頂けませんでした。
きっとお礼金でも入っていると思ったのでしょう。
二人が戻ってきて男性との会話の話を聞くと、
「この子が、旦那さんが話していた息子さんですね。」と息子に笑顔で微笑んでいたようです。
また手紙を渡そうとした時は、「お気を遣わないで下さい。私は当たり前のことをしただけです。そうお伝えください。」と言われたようです。
あの行為は決して当たり前のことではありません。
確実にルール違反です。
確実に社内規則に違反しています。
自分の職務に対してルール違反を私の為に犯したのです。
他人の為に、自分のことをかえりみず犯したのです。
その代償として、あの方は私の人生を変えました。
私に素晴らしい人生の生き方を教えてくれました。
本当に感謝しかありません。
今でもあの方の行為は私の人間として仕事人としての手本になっています。
それは、人の痛みが解る人間になる。
ありがとうございます!
その他にも数多くの出来事がありました。
今思えば自分の都合を優先に考えて行動していたら手に入れることが出来なかった思い出ばかりでした。
面倒くさい、仕方ないと片づけてしまっていたら手に入れることが出来ませんでした。
きっとこれからも様々な出来事が待っていると思います。
面倒くさい、辛い、苦しいと自己中心的に思うことが・・・。
そんな時、逃げてしまうとか諦めてしまえばフラストレーションは溜まるばかりです。
そして最終的に相手を攻撃して自分を正当化することに力を注ぐと思います。
私は何の役にも立たない努力だと思います。
自分にとっても得なんか何も返ってきません。
最後まで諦めずに向かい合う!
心が前向きになれば、行動も前向きになります!
その結果、上手くいこうが失敗しようが後悔なくまた前に進めます。
そして必ずあなたの頑張りを評価してくれる誰かがいます。
それを感じられたあなた最高の幸せを感じるはずです(笑)