希望の星

# 先生、なんとかできませんか

2019年1月に千葉県野田市のアパートで10歳の女の子が亡くなりました。
名前は心愛(みあ)ちゃんです。

心愛ちゃんの死因は、ショック死・致死性不整脈・溺死(できし)の3つの死因の可能性があると言われています。
遺体を調べた医師の話によると、心愛ちゃんの遺体には、全身に数十ヶ所のあざがあり、胸の骨は折れていて、髪の毛は数カ所抜けていて、胃の中には食べ物がまったくありませんでした。
死因にショック死・致死性不整脈があげられている理由は、エネルギーの元になる血中の糖が少なくなっていて、血中にケトン体と呼ばれる物質が出されケトアシドーシスによるものと言われています。
心愛ちゃんの血中のケトン濃度は考えられないほどの高い数値であったようです。
考えられる原因は、想像を絶する強い飢餓やストレス状態にあったからです。
また溺死が疑わしいのは、肺に水がたまっていた為におぼれた時と同じ症状がみられたからです。
無理矢理に水を飲まされた可能性もあるとのことでした。

119番の通報を受けて消防隊が駆けつけました。
狭い浴室の洗い場で、Tシャツと長ズボンを身につけて全身びしょ濡れで仰向けに倒れている心愛ちゃんを発見しました。
すでに呼吸や脈がなく心肺停止状態であり、死後硬直も始まっていました。

いま彼女は暖かい太陽が降りそそぐ天国で、結愛ちゃんも楽しく暮らしている天国で、美味しいご飯をみんなで笑いながら食べて、眠るときは温かい胸の中で思いっきり甘えて眠りについています。
児童虐待死の事件を耳にする度に、こんな事を願う自分に嫌気がさします。
あまりにも無力な自分に嫌気がさします。
愚痴を言ってしまい申し訳ありません。

生前、彼女が通っていた学校のいじめによるアンケートに書いていた内容です。

「お父さんにぼう力を受けています。

 夜中に起こされたり、起きているときにけられたり

 たたかれたりされています。

 先生、どうにかできませんか。」

このアンケート用紙には、『ひみつをまもりますので、しょうじきにこたえてください。なまえをかきにくいばあいは、かかなくてもかまいません
男女のべつ、学校はきにゅうしてください。』と大人が子供に約束する内容の記載がありました。
もう一度言います!
大人が子供に約束した内容文です。

学校側は児童相談所に通報することを決めて、児童相談所は一時保護することを決定しました。
保護に至った理由の一つは、保護した際に医師がPTSD(心的外傷後ストレス障害)の疑いがあると診断したことです。
これが2017年11月の出来事です。
その後、2018年3月に自宅に戻され、2019年1月に天に召されました。

心愛ちゃんの家族構成を紹介しておきます。
実父と実母と妹(当時1歳)の4人家族になります。
この両親ですが、一度離婚をしています。
離婚の原因は、夫によるDV(ドメスティック バイオレンス)であったと言われています。
ではなぜDV夫と再婚したのか?
一説には偽造離婚の噂もあります。
離婚して心愛ちゃんが母親と住むことになれば母子家庭になります。
母子家庭になれば、母子手当や生活保護など補助金が月々給付されます。
つまり不正受給が目的の偽造離婚です。
ではなぜ再婚したのか?
心愛ちゃんの妹が生まれたことで偽造離婚が成り立たなくなったと言われています。
もともと家族は沖縄県糸満市に住んでいましたが、2017年9月に千葉県野田市に引っ越しました。
両親の再婚、引っ越しが心愛ちゃんの運命を悲惨な道に誘い込んでしまいました。

心愛ちゃんが死にいたる2日前からの時系列でお伝えしていきます。
彼女は1月7日の冬休み明けから登校をしていませんでした。
その間も父親は心愛ちゃんに対して風呂場で足踏みさせたり、関節技をかけたり虐待は続いていました。

(1月22日 ※父親はインフルエンザで自宅療養中)

心愛ちゃんを寝室に閉じ込めてトイレにも行かせなかった。
寝室でおもらしをしてしまう。
父親から、「壁に向かって立っていろ」とリビングの端に立たせる。

午後10時頃、母親が立っている心愛ちゃんを確認。

(1月23日)

明け方、まだ立っている心愛ちゃんを母親が確認。

父親が寝た後、心愛ちゃんは母親に「ずっと立たされていた」と話す。

午前9時、眠りから覚めた父親は心愛ちゃんが立っていないことに気がつく。
心愛ちゃんを寝室から連れ出し、再び立たせた。
この間、心愛ちゃんは食事をもらえてない。

父親は病院に行く前に、「風呂場で足踏みしておけ」と心愛ちゃんに指示する。

病院から帰ると、「やっていなかっただろう」と足踏みの続きをさせる。

夕方、心愛ちゃんがおもらしをする。
父親から、「どうするんだ」と怒鳴られる。
心愛ちゃんは、「そこで立っています」と返答する。

(1月24日)

午前1時半前後、再びおもらしをしてしまう。
父親は、「もう着替えがないぞ!いつまで立っているつもりだ」と激怒する。
結果、「午前10時まで立っています」と心愛ちゃんは言わされた。
その間、寒い風呂場とわかっていたにも関わらず布団一枚も渡さなかった。

※後の母親の証言では、衰弱も酷くまぶたも腫れ上がり自力で動ける状態ではなかったと語っている。
またトイレに自力で行けず、おむつをしていたようだ。

午前、父親が目を覚まし風呂場に行く。
心愛ちゃんは風呂場で肌着だけで体育座りをしていた。
髪や肌着は濡れていた。
「見ていないとすぐにさぼろうとする!嘘をつく!」と父親が激怒。
再び風呂場に立たせる。

午後3時頃、父親は「今から5秒以内に服を脱げ!5・4・3・2・1」と数を数え出す。
もう心愛ちゃんには服を脱ぐ力は残っていなかった。
その姿に激怒した父親は、心愛ちゃんにボウルいっぱいの冷水を3回ほど繰り返しかけだした。
追い打ちをかけるように、「シャワーで流せよ」と指示する。
心愛ちゃんがお湯を出そうとしたら、シャワーを取り上げて冷水に替えた。
そして全身に冷水をかけ始めた。
心愛ちゃんは背中を丸めて震えていた。

午後4時頃、父親は心愛ちゃんをリビングに連れてきて馬乗りになって両脚をつかんで体を反らせた。

午後5時頃、またおもらしをする。
「いい加減にしろ!」と父親。
心愛ちゃんにだけ夕食をあげなかった。

午後10時前、心愛ちゃんは「もう寝ようか」と寝室に入ろうとした。
この言葉が10年間この世で生きてきた心愛ちゃんの最後の言葉となる。

それに気づいた父親は、「掃除をさせるから」と呼び戻した。
そして風呂場に連れて行った。
しばらくするとドン・ドンと鈍い音が2回聞こえた。
その後、「ちょっと来て、心愛が動かない」と母親を呼んだ。
「え、なんで」と答えて風呂場に向かった。
そこには仰向けに倒れている心愛ちゃんがいた。
顔は青ざめていた。

父親は119番に電話して、救急隊が駆け付けた。
救急隊が心愛ちゃんの治療をしようとしたが、すでに脈も呼吸もなく心肺停止の状態だった。

以上、22日~24日心愛ちゃんが天に召されるまでの時系列になります。

これは血縁者がおこなう虐待の領域を越えています。
これは二度と起きてはならぬ戦時中におこなわれた拷問と一緒です。
敵国の捕虜が味わってきた悲惨な拷問です。

私は結愛ちゃんの時と同じように心で願うだけでした。
『人が一生に受ける苦痛をすべて、たった10歳の年で受けてしまった。
神様がこれ以上の苦痛を与えてはいけないと天国に連れていった。』
彼女は自分から天国に旅立ったのではなく神様が連れて行かれたと。
正直、そんなことしか思えない自分に腹が立ちます。

逮捕された父親の携帯電話からは、娘を虐待している様子を撮影しているものが見つかっています。
「ママ、助けて!お願い」と叫びながら玄関で土下座をする姿。
「死んじゃいそう!苦しいよ」と弱々し声を出して廊下に立たされている姿。
「ママ、嫌だ!助けて」と叫びながら風呂場に連れ込まれて、父親から「くねくねしてんじゃねぇ」「元気じゃん、死んだふりするな」の卑劣な言葉を浴びさせられ虐待される姿。
母親が父親の指示のもと撮影したものに間違いないと思います。
目の前で自分の娘が悲鳴を上げながら苦しんでいる姿に何を感じて撮影していたのか。

後に母親は次のように語っていました。
「娘が叱られていれば、自分が夫に何か言われたりせずに済むと思った。
止めたくても止められなかった」

今回の事件に対して一言、私の個人的感情を言わせて頂いてもよろしいでしょうか。
止めたくても止められなかった?
逃げることは出来たじゃないか!
22日から24日、あなた(母親)も自宅に一緒にいたのですよね。
あなたは娘が夫から虐待を受けているのに何をしていた。
父親からの虐待に必死に耐えながら戦ってきた10歳の娘に何をしてあげた。
娘は父親からの虐待に立ち向かっていたのに、あなたは娘を盾(たて)にして逃げていただけじゃないか。
いや、逃げているのでなく娘の後ろに身を隠して自身を守っていただけだよな。
あなたが必死に守ろうとしたものは何ですか?
あなたが一番恐れていたものは何ですか?
私が代りに言わせて頂きます。
あなたが必死に守ろうとしたのは自分です!
あなたが一番恐れていたのは自分に飛び火する恐怖です!
そんなあなたを娘は最後まで頼っていたと思います。
最後まで信じていたと思います。

千葉地裁は、父親に懲役16年を言い渡しました。
検察側の求刑は懲役18年でした。
この父親の虐待行為は異常と誰しもが思うものです。
間違いなく虐待依存症と言っても過言ではありません。
心愛ちゃんは10歳の若さで命を奪われました。
人間の寿命は80年とか85年と思えば、70年から75年の人生が奪われたことになります。
それがたったの16年で同等の罪を償うことになるのでしょうか。
他人を死亡させたら殺人罪に問われて、無期懲役や極刑になることがあります。
未来に向けて、虐待防止の抑止力って何ですか?

一方、母親は傷害幇助(ほうじょ)罪で懲役2年6ヶ月(保護観察付き執行猶予5年の有罪判決を受けました。
裁判では母親に対して、夫のDVによる恐怖や圧力で自分の意見が言える状態ではなかったことが認められました。
また夫に対して「旦那から受けていた暴言や暴力をDVとは思っていなかった。旦那のことは好きだった」と話していたようです。
裁判中は嘘偽りのない証言をしていて、自身も以前夫からのDVを受けていたことがこの量刑になったのでしょう。
それでも母親の目の前には、想像を絶する苦痛に耐えて力尽きた娘の姿があったはずです。
これが日本の司法がくだした判決であり、真摯に受け入れなければいけません。

最後に心愛ちゃんの妹ですが、事件後は児童養護施設で暮らしているのではないでしょうか。
事件の記憶がないことを願うばかりです。
今後は少しでも幸せになれるように、新たな親権者に出会えることを祈っています。