希望の星

# あそびってあほみたい

1 8 9

この数字を皆さんはご存じでしょうか?
この数字の組み合わせを皆さんはご存じでしょうか?

1 8 9・・・この数字は命を救う番号です。
1 8 9・・・子供の命を救う電話番号です。

世界中に新型コロナの感染が広がる4月に「児童虐待防止法」が改定されました。
家庭内での子供への「しつけ」を名目にした「体罰」を明確に禁止することになりました。
また児童相談所(児相)の体制強化をしていくため、虐待が疑われる子供を一時保護する職員と、親権者への支援を行う職員を分けることにしました。
これは職員が親権者との絡みによる一時保護をためらうのを防ぐためです。

この児童虐待防止法が改定するきっかけになった2件の事件があります。
国を動かした悲しい事件がありました。
2018年3月、東京目黒区のアパートで当時5歳だった女の子が亡くなりました。
名前は結愛(ゆあ)ちゃんです。

結愛ちゃんの死因は、低栄養で引き起こされた肺炎による敗血症でした。
119番の通報を受けて消防隊が駆けつけました。
そして消防隊が目にしたものは、おむつをはいてあばら骨が浮くほどやせ細った心肺停止状態の結愛ちゃんでした。
5歳時の平均体重は20キロ程、その時の結愛ちゃんの体重は12.2キロでした。
その後、両親は保護責任遺棄致死容疑で逮捕されました。

いま彼女は天国で毎日たくさんの友達と遊んで、お腹いっぱいご飯を食べて、寝るときは優しい膝枕の上で寝ています。
身勝手な私はそのように思うようにしています。

生前、彼女がママに書いた反省文(ノート)があります。

「ママ もうパパとママにいわれなくてもしっかりとじぶんからきょうよりかもっとあしたはできるようにするから

もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします

ほんとうにおなじことはしません ゆるして

きのうはぜんぜんできてなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす

これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる

もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします

あしたのあさは きょうみたいにやるんじゃなくて

もうあしたはぜったいやるんだとおもって いっしょうけんめいやって

パパとママにみせるぞというきもちでやるぞ」

まだ小学生にもなっていない遊び盛りの子供がママに書いた反省文です。
暖房のきいた暖かい部屋で、ママに書いた反省文だと思いますか?
彼女が悪いことをして両親に許してもらおうと書いたものだと思いますか?

その前に彼女の家の家族構成を紹介しておきます。
実母と義父そして義父との間に生まれた弟がいます。
彼女は前夫の子供であり、母親の連れ子になります。
2016年9月に息子が誕生してから、義父から結愛ちゃんへの叱責・暴力による虐待が激しくなりました。
義父は息子ができてからは、前夫の子供が邪魔に思うようになったのです。

5歳の結愛ちゃんが何でこんなに平仮名を書けたのか?
毎日、早朝4時に一人で起きて、寒い一人部屋で平仮名の練習をしていたからです。
虐待をおこなっていた義父が強制的に遣らせていました。

私はこの手紙に秘められた彼女の凄まじい思いを感じました。
『ママとパパと弟と一緒にご飯を食べたい!
ママとパパと弟と一緒に外で遊びたい!
頑張っているけど、平仮名を中々覚えることが出来ない。
覚えることに疲れて、また気力がなくなって遊んでしまった。
遊んでしまったことを怒られて、そんな夢が遠のいてしまう。
私はアホな子だ!
今度こそ絶対に遊ぶことはやめよう!
ママ、パパ、どうか解って下さい!
ママ、パパ、どうか許して下さい!
私を仲間にいれて下さい!
私に少しだけ愛情を下さい!』

まだ5歳の幼い子供ですよ。
一生懸命に遊ぶことが仕事ですよ。
この年の子は、遊びを通して相手とのコミュニケーション、良いこと悪いこと、
喜び悲しみを学んで人格形成をしていきます。
その遊びを自ら否定して閉ざそうとしている。
改めて言いわせて頂きます。
この手紙を書いたのは5歳の幼い女の子です。

食事をする時は暗い部屋で、一人孤独に食べていたようです。
朝はスープだけ、昼はお椀少々の猫飯、夜はお椀半分のご飯だけ。
隣の部屋ではパパとママ、そして弟が3人で食事をとっていたようです。
また出かける時は、結愛ちゃんだけ残して3人で出かけていたようです。
きっと世間にバレないように縄に結わいて監禁していたに違いありません。

2018年3月2日、亡くなる日です。
5日前から嘔吐が続いており、体温も少し高めであった。
昼過ぎになると眠いのか意識がもうろうとしてきた。
母親が「眠いの?」と聞くと、結愛ちゃんからは「眠くない!」と弱々しい声で返答があった。

夕方になって間もなく、結愛ちゃんは一人でトイレにいけず母親が連れていった。

その後、体調が急変してきて体に力がはいらなくなり、体もどんどん冷えてきた。
母親は結愛ちゃんを温めるために足にタオルを巻いた。

それでも衰弱していく結愛ちゃんに焦った母親は、来てもいない祖父母の話をした。
「ばあば、じいじが来ているよ。」
「ディズニーランドに行こう。」

そして来月から小学校新1年生になるので、
「小学校に行ったら、楽しいことしよう。」
母親が声をかけた。

結愛ちゃんは、「うん!」と弱々しく笑顔を返した。

まもなく結愛ちゃんは苦しそうな表情で、「お腹が痛いよ!お腹が痛いよ!」と繰り返し母親に訴えるようになった。

昼過ぎに飲んだスポーツドリンクを吐き出した瞬間です・・・
そのまま、まぶたを閉じて、もう開くことはありませんでした。

数分後に、義父が119番に通報した。

結愛ちゃんの最期はこの世で叶わなかったことを夢みて天国に旅立ちました。
『人が一生に受ける苦痛をすべて、あの幼い年で受けてしまった。
神様がこれ以上の苦痛を与えてはいけないと天国に連れていった。』
私は今でも自分に言い聞かせています。
彼女は自分から天国に旅立ったのではなく神様が連れて行かれたと。
そう思わないと心が折れてしまいます。

この母親が必死で守ってきたのは何ですか?
この母親が一番恐れていたことは何ですか?
後の報道では、義父からの心理的DV(家庭内暴力)も酷く、母親もその恐怖の渦中にいたと伝えられています。

私は、それでも言わせて頂きます。
あなたが必死で守っていたのは何ですか?
あなたが一番恐れていたのは何ですか?
なぜ結愛ちゃんが嘔吐を始めた時に病院に連れて行かなかった。
なぜ子供達を連れて逃げなかった。

親は我が子の為になら、身代わりになって命を捨てることが出来る!
私は確信しています。

この痛ましい事件での裁判所の判決は、義父に懲役13年の判決を言い渡した。
公判で検察側は、結愛ちゃんに対する激しい食事制限、心理的DVで母親も巻き込んで共犯にして、結愛ちゃんの逃げ場を奪って「いじめ抜いた」として、殺人罪に匹敵する量刑を求めていた。
これに対して弁護側は、結愛ちゃんの命の危険を感じてから死亡まで放置した訳ではない、危険を認識したのは死亡の前日で、しかも自ら119番通報しているとした。

この義父は、刑務所の中では3食の食事を与えられて生きることを保障されています。
そして十数年後には刑を終えて出所してきます。
日本国の司法制度では、他人を殺害すれば殺人罪による無期懲役や極刑があります。
殺人罪による極刑は、犯罪者が身をもって相手に償う死刑です。

また母親には、結愛ちゃんの義父である夫から心理的DVがあったといえ、夫の暴行を結果的に容認したとして懲役8年の判決を言い渡された。
母親の弁護側は一審の判決を不服として控訴しており、2020年7月21日に第1回控訴審が行われた。
控訴内容は夫に心理的DVの影響を過小評価していると量刑は不当と主張。
判決は2020年9月8日を予定している。

もう一人の被害者と言っても過言ではない、結愛ちゃんの弟は今どこにいるのか。
品川児童相談所の話によると、弟は児童養護施設で保護されていており、今後の引き取り先など含めて慎重に検討しているようです。
あの痛ましい事件の記憶がないこと、少しでも幸せになれる環境に置かれることを望みます。